2012年9月30日日曜日

「LIFE-mag」のこと

新潟インタビューマガジン「LIFE-mag」。 

創刊号の奥付には2008年6月25日とあるから、
編集兼発行人の小林弘樹さんが、
「あのー僕これから雑誌作りたいんですけど」
って北光社に来たのはもう4年も前の話なのか。

聞けば取材も編集も営業も全部一人でやるというので
「じゃあ君は新潟の花森安治になりなさい」なんて、きわめて適当に
返答した覚えがある。向こうは向こうで、「はあ・・」と気のあるようなないような様子。


とはいえその後、妙に彼のことが気になり、インタビュー中心の誌面構成にするという
からには、自分も誰かを紹介した方がいいのかな、などと時折考えたりしていたある日、
思いのほか早く創刊号の束を持って彼はやってきた。一読して、
「なんだ、俺余計なお世話じゃん」と感じた。

最初に会って話をした時の、なんとなく噛み合わなかった印象も、
あながち的外れではないようで、自分には思いもつかないような、
この新潟市で活動されている人たちの、様々な現場が紹介されていた。

写真や印刷やレイアウトに魅せられたわけではない。ただ、むしろその荒削りな
写真に写った人たちの表情や、語られる言葉越しに、小林さんの視線と言葉を
感じることが出来た。無謀にも(!)、一人で雑誌を作ろうとした、当時まだ20代前半の
彼が、現在出来る精一杯の、その等身大の姿を見たのだ。

つまりそれは完璧な雑誌だった。

以降約1年半余りの間に、4冊の「LIFE-mag」を作り、その発売時や追加注文分の
納品に来た時には、何やかやとアドバイスともつかないような雑談を交わすようになったが、
いつも静かな口調で話す彼の印象は、最初会った時とさほど変わらなかった。
そして誌面はというと、その口調と同様の、静かな広がりを見せて行った。
彼の書く文章に垣間見られる「有機的な繋がり」というやつだ。

今、自分の立っているこの場所は非常に脆い。だとしても、どんな状況であろうと軸足は
そこに刺さっているからこそ出来る「繋がり」だ。10歳ほど歳下の彼の、持ち込みの雑誌に
協力してあげよう、などという気持ちはサラサラなく、ただ単にこの新潟市で、「LIFE-mag」
に関われることが嬉しかったのだ。

3年前の冬、北光社の閉店が決まった頃、時を同じくして、4号目を刊行して少し経ったばかりの
「LIFE-mag」も、資金面での問題により一旦活動を休止するとの報告を受けた。
だけどどうだろう・・年が明けて1月末、閉店となってガラーンとした北光社のカーテンを開けて、
在庫を引き取りに来た時の、薄暗い店内での会話には、お互いそりゃまあ疲れては
いるけれど、悲壮感というものはかけらもなかったように記憶している。

「終わったねえ」
「そうですねえ」
「まあしゃあないねえ」
「そうですねえ」

「・・・記念撮影していいすか?」
「え?」

お互い半笑いでレジカウンターに佇んでそんなやりとりをしたと思うんだけど
小林君、あの写真ってまだ残ってるのかなあ?

「第4号 好評発売中!」と、黄色い紙に書いたポップを見本誌にペタっと貼っ付けた
最新号の束を回収して、精算を済ませてその場で別れた。そんなときでも相変わらずで、
お互い志半ばで終わらざるをえなかった状況を考えればあまりにも普通に。


で、それから2年半くらい、「やっぱりやります」といって小林さんはまた静かに報告に来た。
静かに事務所まで借りて(笑)

状況が変われども、そんな「繋がり」があったので、3年越しの復活にも特に
驚きはない。やればいいんだよ。簡単に書かせてもらうけど。
だけど誰にでも言うわけじゃないよ。


たっぷり時間をかけてこの夏刊行された「LIFE-mag」復活の第5号。

特集は「佐渡」。

写真もレイアウトもひっそりとバージョンアップしています。パラっとめくっていて
「小林君、凄ぇ!」と、思わず目を剥いた佐渡の荒波の写真は、さすがに彼のものではなく
佐渡在住の写真家、梶井照陰さんのものでした。そんな誌面全体の緩急のつけ方も
見事です。

製作期間はどれほどだろう・・佐渡に暮らす人々の「多様な」生き方を「インタビュー」して
まわった編集発行人、小林弘樹さんの想いが、十分過ぎるほど伝わる待望の復活号。
発売して1ヶ月が経とうとしています。バックナンバーも併せて在庫していますので、
どうぞお手にとってご覧ください。そして皆様に静かな声でご提案。出来たら本屋で
買ってください。再び雑誌を作ろうと決意した、小林さんへの一票が、取扱い書店への
利益にもなる、まさに「有機的な繋がり」を・・・


残暑の厳しかった今年の夏、今夜は台風が近づいているようで、雨足がだんだんと
強くなってきました。夏のかけらも吹き飛ぶ前に、書いておこうと思ったこの9月のこと。

新潟インタビューマガジン 「LIFE-mag」 第5号。好評発売中です!





3ヶ月前、「LIFE-mag」復刊を記念した説明会の会場に、この場所を提供した。
小林氏が引越しを済ませたばかりの事務所から無造作に持ってきた、
販売用のバックナンバー。4号の束の中の1冊に付いていた黄色い紙には

「第4号 好評発売中!」

と、見覚えのある適当な文字で書いてあった。


「お、この束もしかしてあの時北光社にあったやつ?」
「・・そうみたいですね」

「偶然だね」
「そうですね」


静かだけど、なんとなく熱い思い出だ。






2012年9月4日火曜日

夏が終わってゆきます 2012

8月中に1回くらい書かなきゃと思っていたのにもう9月だよ!
何だかさあ・・年明けたのこないだじゃなかったっけ?
今日入荷の荷物の中に来年のカレンダーとかあって愕然としたよ。

皆様お久しぶりです。毎度すいません。

前回がオオヤコーヒクラスのご案内その他で、それ以来の更新となりましたが
今回もこの話題から。オオヤコーヒクラス、3回目は「トレーニング」。
過去2回のテイスティングレクチャーを経ていよいよ実践編です。
7月にご参加いただいた方にはお伝えしましたが、次回参加される方は
以下の道具をなるべくご用意ください。


・ポット(コーヒーの粉にお湯を注ぐ用のもの)
・コーヒー受け(おとしたコーヒーを受ける、ボウルや小さな片手鍋などなんでも)
・ネルフィルター(制作したものがあれば)
・ハンドル(お持ちであれば)

こちらの方でも若干の用意はありますが、お持ちいただけるとありがたいです。
ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。




午前中からの雨で、今夜は幾分過ごしやすいですが、こう毎日毎日暑いと
人の往来そのものが少なく、それでも「暑い暑い」いいながらご来店くださる
お客様や、特に8月は遠方より訪ねてきてくださる方もたくさんいらっしゃって
本当にありがたいことです。9月になったとはいえまだまだ暑い。もう少し夏の余韻を
楽しみましょう。北書店の夏の展示はまだ継続中です。ぜひ見にいらしてください。


小林敏也原画展~「画本宮澤賢治」より (9/8迄)






















たくさんの名作絵本を出版した「パロル舎」の人気シリーズ
「画本(えほん)宮澤賢治」の作者、小林敏也さんの原画を
児童書コーナーにて、展示しています。

この「パロル舎」さんは、残念ながら今はもうありません。
新刊書店では入手困難なこのシリーズを、このたびの原画展を記念して
一堂に集めました。只今、大絶賛販売中です!

小林敏也さんは、デザイナー・イラストレーターとして、東京都青梅市にて
「山猫あとりゑ」を営んでおられます。
ある地域の雑木林の保護活動の一環として、この画本シリーズの
スライド上演を「幻燈会」と称して、雑木林の中で開催しているそうです。
この「幻燈会」を新潟でもぜひやっていただきたいということで、小林さんを
お招きしたのがきっかけで、北書店にも原画を提供していただきました。

2週間前に別会場3箇所で行われた幻燈会に私も参加しましたが、
とてもいい雰囲気でした。当日の様子が今回の企画者、絵本LIVE実行委員会 
さんのブログに掲載されています。今後も継続的な開催を希望します。

原画展は今週末で終了ですが、「画本」は当店にて継続販売いたします。
ひとつひとつの佇まいがまさしく絵画のようです。
それにこのシリーズ、今は古書価格も割と高いので、定価にて販売している
この機会を、ぜひともご利用くださいませ。

普段あらためて聞くこともなかったんですが、顔なじみのお客様にこの展示の案内をしようと、
「ところで宮沢賢治ってどうです?」って聞くと、かなりの割合で皆様お好きなようで・・
それもまた新鮮な発見でした。

そんなわけでして、まったく更新せず申し訳ありませんでしたが、今年も
とても充実した夏を過ごせました。さっき昨年の北書店ブログをみたら
同じような感じでほとんど更新してないでやんの。
それで夏の終わりあたりにまとめて書いているのも変わらない。困ったもんだ。
で、秋はまたいろいろあるって書いてある・・・これも変わらなかったりして。
はい。今年の秋もいろいろとありそうです。

ですが今夜はこの辺で失礼します。あんまりてんこ盛りだとまた「北書店ファンクラブ」に
「長いw」って書かれちゃうし。つーか今回のも書かれそう。なんだよ「w」って(笑)

ではまた近日のうちに。
同じような1年が、それでも確実に動いているようで。そこから見える景色とか、そんなような
ことを書きます。だって本当にそうなんだよ。