2011年1月11日火曜日

日々ごはん

・風が吹いて 雲が流れて 台所からは 夕ごはんのいい匂い


・木の実が熟すように 日差しが傾くように


・迷いながら探しながら  きっと私は ごはんを作りつづける


・食べることでつづいてゆく ひともからだもこれからも


・ゆっくりとうつろいゆく わたしもひとつの小さな自然だ


・わたしたちは どこまで行くのだろう


・退屈の中にある 残酷で色とりどりで そして儚い世界


・もっとずっと 自分がなくなってしまうほど遠くまで


・見えなくても触れなくても いつまでもなくならない思い出という魔法


・からだがからっぽになっていた。 こころもからっぽになっていた。


・本当は いつでも どこへでも 飛んでゆける     


・毎日を 確かめながら 次の広場へ




北書店画廊1月の展示
高山なおみ  「日々ごはん」 カバー原画展 1/6~1/26


「日々ごはん」は、2004年に発売され、2010年に
12巻目をもって完結した、料理家でエッセイスト
高山なおみさんの「ごはん」と共にあるささやかな
日常を綴る名エッセイ。


四六判の縦が少し短い独特の判型と、ソフトカバーの
やさしい質感がとてもよく手になじみます。ひとくちに
ソフトカバーと言っても出版社によって様々で、このシリーズを
はじめ、たくさんの魅力的な本を作っているアノニマスタジオ
カバーはとてもしなやか。ページをめくっていると、本の内容に
負けず劣らずのていねいな仕事ぶりが伝わってきます。
皆様も書店へ行かれたときは是非、パラパラとめくってそれぞれの
違いを味わってみてください。それも一つの本屋の楽しみ方。


パラパラとめくったあとは、元あった時よりも丁寧に棚に戻すように
心がけましょう。そうすると自分の読みたいと思う素敵な本はおのずと
近寄って来るものです。
(暮しの手帖社発行、『暮らしのヒント集』風に。)


冒頭に思わず書き写したのは、各巻の表紙に巻かれている帯に書かれた言葉。


高山さんの文章の魅力をどう伝えたらいいのだろう。


本文に書かれているのは、いつものあたりまえの日常。読んだ本や聴いた音楽。
友人、家族との時間。そんな身のまわりにあるものへのあたたかな眼差しが、
その日に作り、食べた「ごはん」の描写によってビシビシ伝わってきます。
逆もまた然りで、登場する「ごはん」が、異常なほどに美味そうなのは、
そんな日常に対しての、愛情ある描写によってなのかもしれません。
健康的であるとか、経済的でなおかつ美味しいとかいったレシピ本からは
得られない「いかにして生きるか」といったことをなんとなく考えさせられる
高山さんの文章は、エッセイであって文学でもあると思います。


この度、完結を記念して、昨年東京で行なわれた「日々ごはん」のカバー原画展を
アノニマスタジオさんのご協力によって当店にて実現することができました。
展示の日には実際に東京から応援に駆けつけてくださいました。
安西さん、ありがとうございました。ホント寒い中を・・・


私事ながら、展示されたそれぞれの原画を見ていると、この6年間の記憶も
ふつふつと蘇ってくるようで感慨深いです。いろいろありました(こればっかし)
北書店という空間でこの展示をしていることが何だか不思議。


ともあれ多くの皆様にこの展示を見ていただきたく思います。もちろん書籍も
販売しています。高山さんの著作はもちろん、高山さんオススメの文庫本も
あわせて用意してありますのでどうぞゆっくりとした時間をお楽しみください。


原画を鑑賞しつつ本を読む。窓の外には雪が降る。と、


最後にもうひとつ。「日々ごはん」は単行本としてはひとまず完結ですが、
今も続いています。
高山さんのホームページふくう食堂をぜひご覧ください。


ふくう食堂の「ふくう」というのは、「福を食う」という意味だそうです。


それでは、遅くなってしまい恐縮ですが、今年も北書店をよろしくお願いいたします。


2011年1月 
北書店 代表 佐藤雄一