2014年5月28日水曜日

MJ

明日は新潟日報メディアシップ20F「そらの広場」にて、南陀楼綾繁さんを
お迎えしてのトークイベント開催です。

今朝、現場で会場設営の打ち合わせに行ってきましたが、ここでナンダロウさんが
話をしている図を想像するだけでもう楽しみで楽しみで(笑)

お申し込みもたくさんいただきましてありがとうございます。皆様もそれぞれに、新刊屋の
私とは違った視点で、町のことでもブックイベントのことでも、考えていることや興味を
持っておられることなど、なんでもナンダロウさんに質問してみてください。

お申し込みはまだまだ受付中です。めったにない機会ですのでぜひご参加ください。
では明日お待ちしています!


さて、お知らせをひとつ。あと10日ほどでニイガタブックライト一箱古本市 in現代市が
開催されますが、ナンダロウさん、三上延さんに続いて、最高に素敵なゲストをご紹介。
谷中の『旅ベーグルさんが、ベーグルと本を持って学校町に登場します!

先月参加した不忍ブックストリートについて、5/4の北書店ブログに書かせていただきましたが、
そこに旅ベーグルも出てきます。店主の松村純也さん(マツジュン→MJ)に、ぜひとも
ニイガタブックライトに参加していただきたく、直接交渉に出かけたのでした。ベーグルが
美味しいのはもちろんですが、このマツジュンさんがとにかく魅力的!私は今年の2月に
初めてお会いしたんですが一瞬で好きになった。

経歴は、谷根千ガイドの決定版、南陀楼綾繁著「谷根千ちいさなお店散歩」(132-135)を
ご参照ください(笑)。朝の7時から開店している旅ベーグルの経営の傍ら、イベントへの
参加も積極的に行なうマツジュン氏、特筆すべきはご自身が立ち上げたZINEレーベル、
TABI BOOKS」の活動。自宅のパソコンで作成した冊子を持ってサンフランシスコの書店に
営業へ行って取り扱ってもらった、なんてエピソードもマツジュンだったら違和感ない。
そんな会話を思い出しながら、お土産にといただいた冊子のタイトルを見たら
「サンフラン志津子」だったのも最高。これ持ってサンフランシスコ行ったのか・・

というわけで、6月8日の一箱古本市は、ベーグルの販売はもちろん、せっかくの新潟、
それも舞台がニイガタブックライトということで、「新潟旅ベーグル」を作っちゃうか!
なんて企画も進行していますので、皆様ぜひマツジュンさんに会いにきてください。



南陀楼綾繁の教え。

「マツジュンはね、『MJ』って呼ぶと喜ぶよ」


昨日、MJから私たちに、素敵な手紙と写真が届きました。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


新潟のみなさま、はじめまして。

わたくし、東京の谷中という町で妻と旅ベーグルを営んでおります、
松村純也と申します。この度は北書店の佐藤店長のご好意により、
NBL2014へ参加させていただける運びとなりました。マンモス楽しみにしています!
6月8日がとても待ちどおしいです!

ニイガタブックライトでは妻から譲り受けた「Olive」のバックナンバー(多数)を、
当日の朝に焼き上げた「ローズマリーとオリーブのベーグル」とセットで(抱き合わせで)
販売する予定です。それと当店で人気のベーグル数種も新幹線で運び込みますので、
当日は「出張旅ベーグル in 新潟」のような感じになったらいいなと考えています。
ベーグルは売り切れ終いですのでお早めに!

また、これから発生するであろう楽しい企画のために、当日ご来店いただいたお客様には
写真の撮影と簡単なインタビューをお願いするかもしれませんが、どうぞ越後平野のような
広い心でご対応いただければ、私マンモス嬉しく存じます。

本を介して新潟の皆さんとふれあい、かわいい子とはきっと抱きしめ合えることができる、
そんな機会をいただければ幸いです。6月を楽しみましょう!




旅ベーグル / TABI BOOKS  松村純也 































今夜の不忍ブックストリームは、MJがホストの、谷根千の注目の店や人を紹介する
コーナー「マツジュンの部屋」の6回目だそうですよ。なんてタイムリーな!
皆さん要チェックです。


2014年5月26日月曜日

メディアシップでトークイベントをやります。



さてさて、5月もあっという間に最終週に突入です。
週末はもう6月になっているので、ということは来週末は
一箱古本市か・・2週間ないですね。関連企画のお知らせが
立て込んできますがどうぞお付き合いくださいませ。

まずは今週木曜日、5月29日の夜7時より、新潟日報メディアシップ20階
「そらの広場」をお借りして、“ミスター一箱古本市”南陀楼綾繁さんの
新刊刊行と、ニイガタブックライト発足3周年もついでに記念して、トークイベントを
開催します。まだまだお申し込み受付中です。なんせ広場だから。たくさん入るから。
一箱古本市をより一層味わい深いものにするための一夜。皆様ぜひご参加ください。
出店を予定されている店主さんは特に特に。以下詳細です。


『谷根千ちいさなお店散歩』トークツアー 2014

ちいさなお店とまちの話
~一箱古本市を通して見えてきたこと


南陀楼綾繁×佐藤雄一(北書店)
オープニングアクト・吉上恭太(歌とギター)

【日時】 5月29日(木)19:00~21:00(18:45開場)
【会場】 新潟日報メディアシップ20F そらの広場
【参加費】 1000円
【お申し込み】 北書店店頭・お電話・メール

こちらがお題となる、南陀楼さんの最新刊、只今店頭にて絶賛発売中。






















「谷根千ちいさなお店散歩」(WAVE出版)1620円

いまや全国に広がりを見せるブックイベント、一箱古本市の歴史は、
ナンダロウさんが本好き有志とともに10年前に結成した「不忍ブックストリート」から
始まります。その舞台となる町が、谷中・根津・千駄木の通称“谷根千”。

本書は、その谷根千で商売されている個人商店をエリア毎に分けて紹介した、
町歩きにはもってこいの散策ガイドであると同時に、この町がブックイベントの
舞台というだけでなく、生活の場でもあるナンダロウさんだからこそ引き出せた
お店や店主の物語も必見の1冊。この本をめぐっての、町とお店のお話を彼是を
ナンダロウさんに伺ってみようかと思います。歩き続けることによって見えてくるもの。

ニイガタブックライトが結成され、学校町で初めて一箱古本市を開催したのが2011年6月。
以降定期的に年2回ペースで開催し、新潟市でもすっかり定着した感じですが、それもこれも
ナンダロウさんが北書店をたずねて遊びに来てくれたことから始まったことです。

2010年12月。冬のある日の南陀楼綾繁、『新潟 ちいさなお店散歩』。

それがきっかけで出会った人たちや、起こった出来事を数え上げたらきりがないほど。
その延長の5・29メディアシップ。ちいさなご縁が重なってのいろんなお話は、おっきな場所で
やったらどうだろうと企画してみました。夕暮れ時から始まって、新潟市中心街のきれいな夜景を
横目に南陀楼綾繁。これは楽しみです。日報さんの話によると「そらの広場」は、この時間帯、
高校生カップルが多いんですってね。・・ナンダロウアヤシゲ?誰?みたいな。そんな感じも
面白いなあ。高校生、よかったら参加してね。


詳細にもありますが、この日はオープニングアクトとして“不忍のギター弾き”吉上恭太さんも
いらっしゃいます。いわば友情参戦。すごくざっくりした紹介ですみません、シブくてカッコいい
おじさんです。昨年発売になった吉上さんのCDのライナーノートには、ナンダロウさんによって
詳細に書かれた、驚愕すぎる吉上さんのプロフィールが掲載されているのでぜひご覧下さい。
当日会場にて販売いたします。




吉上恭太
「On Shinobazu Book Street」 
Shinobuphon Records SBP-1001
1,500円+税

簡単な告知だけ、と思いつつ、つい長くなってしまいますが、最後に
このCDに収録されている、ある人物について歌われているであろう
曲の歌詞を紹介しつつ。

それでは今週木曜の夜に。皆様のご参加お待ちしております。


なんだ ( music 吉上恭太 / words 鶯じろ吉)


そこに話があれば
どこまでも転がって行くよ
知りたいことだらけさ
だから終わらない
古本屋通いの毎日
その先で見つけたものは
なんだ


そこに人がいれば
いつでも会いに行く
行きたいところだらけさ
だから終わらない
自転車操業の毎日
その街で蒔いている種は
なんだ


ひかげも ひなたも じぶんで きめる
紙魚にも 羊歯にも きれいないのち
甘ずっぱい 肉団子の ファンダンゴ
でもその素顔は なんだろう


そこに蛙がいれば
どこまででも遠回り
でも見たいものだらけさ
だから終わらない
退屈しらずの毎日
きみに伝えたいことが
あるんだ


ひかげも ひなたも じぶんで きめる
紙魚にも 羊歯にも きれいないのち
甘ずっぱい 肉団子の ファンダンゴ
でもその素顔は なんだろう


2014年5月6日火曜日

小林章さんがいらっしゃいます


北書店では、20:00閉店後の店内で、『北酒場』という会合のような
飲み会のようなものを開くことが、時々ですがありまして、来週の月曜日は、
新潟市出身、ドイツの「モノタイプ社」タイプディレクター、小林章さんをお招きします。

小林さんのご来店は、昨年の11月に開催した、『まちモジ』(グラフィック社)

発売記念トークショー以来ですから半年振りですね。今回は、イベントというでもなく、
といってまるっきりプライベートな飲み会でもないような交流会北酒場を企画しました。

以下詳細です。



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小林章さんを囲む会

フォントデザイナー小林章さんを囲んで、ざっくばらんにお話しする会です。
どなたでも参加できます。お気軽にお申し込みください。


会場 北書店
日時 512日(月) 19:30開場 20:0022:30頃予定
参加費 3000円(食事・飲み物代含)
定員 20
申し込み方法 北書店店頭・メール(sato@kitashoten.net)にて受付中



小林   こばやし・あきら

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。2001年に独ライノタイプ社
(2013年に社名をモノタイプに変更)のタイプディレクターに就任。

現在,ドイツ在住。書体の品質管理のほか,自身のオリジナル書体の制作,
有名な書体デザイナーであるヘルマン・ツァップ氏やアドリアン・フルティガー氏と
共同での書体開発,過去の書体ファミリーの改刻,企業制定書体(コーポレートタイプ)の開発を担当している。欧米,アジアを中心に講演やフォントデザインワークショップを行っているほか,世界的なタイプフェイスデザインコンテストの審査員も務めている。

 著作

『欧文書体:その背景と使い方』(2005年、美術出版社)
『欧文書体2:定番書体と演出法』2008年、美術出版社)
『フォントのふしぎ』(2011年、美術出版社)
『まちモジ』(2013年、グラフィック社)
『欧文タイポグラフィの基本』(監修 2014年、グラフィック社)

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旅先では家族写真よりも、変り種書体の看板等を撮影することに熱心な小林さん。

「あくまでもざっくばらんに」という、今回の交流会の告知用に、なにかいいお写真は
ありますか?とリクエストしたところ、いただきましたよ素敵なお写真を。
バンコクの屋台を歩きまわった時の一枚だそうで・・





























“バッタの脚が見えています。食べているのはコガネムシ。
このあとタガメも食べましたが、コガネムシがいちばんおいしかったです。”



気さくですね!フォントの話でも旅の思い出でも、この機会になんでも質問しちゃいましょう。
来週月曜の夜、小林さんと楽しい一夜を過ごせるよう、準備してお待ちしています。
只今お申し込み受付中です!





2014年5月4日日曜日

本屋と旅について②



先週の木曜日に開催した嶋浩一郎さんとのトークイベントは満員御礼、
とても楽しい時間となった。会話の合い間にはさんでくる、しまさんトリビア
面白く、お客さんのメモ率いつもより高め。ケトルをパラパラとめくっている時の
ような、雑誌的テンポのよさが時計を見ながらの進行を妨げる。

2月にB&Bで開催した内沼晋太郎さんとのトークでは、内沼さんが1時間で
きっちり間を取り、後半はお客さんとの質疑応答という2部構成にされていて、
今回はそれを真似てみようかと思ったのだが、ついついトークに引き込まれてしまった。

打ち上げは北酒場。自己紹介をしながら、皆ここぞとばかり、“新潟トリビア”を
披露する。嶋さんはそれをスマホの留守電に吹き込んでいる。

酒を飲みながらも、時折席を立ち、棚を見て廻る嶋さんは好奇心の人だ。
それは本屋として、かなり重要な要素である。早朝や夜中に、B&Bの棚を
ひとりでいじることが多いのだという。

2次会の「大倉酒店」は北書店のイベント打ち上げの定番。角打ちではない、
座って飲める酒屋さんだ。今回のケトルには北書店とあわせてご登場いただいた。
ということで、やはりここはお連れしなくては。カレーライスの素朴な手描きイラストが
お品書きになっているのを見て、嶋さんのテンションがちょっと上がる。

後日嶋さんよりお礼メール。北酒場も大倉酒店も楽しんでくださったようでなにより。
新潟のあとずっと出張続きで、数日は落ち着くことがなかったそうだ。
ケトルの取材でお世話になったライターのFさん、カメラマンのMさんも、
皆さん多忙の合い間を縫って北書店まで来てくださったことにあらためて感謝。

皆、旅を続けているのだ。


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めったにないことなので、こちらが旅に出た話も書いておきたい。

先週の土曜日、今年で10周年となる不忍ブックストリートのひとコマ、
「全国ブックイベント・シンポジウム」にて、主催の南陀楼綾繁(ナンダロウ・アヤシゲ)さん
司会のもと、各地で精力的に活動されている方々に混ざってお話させていただいた。
会場ロビーでの待ち合わせ、皆さん初顔合わせだ(多分)。

木村敦子さん(モリブロ/岩手
阿部史枝さん・勝邦義さん(石巻まちの本棚/宮城
吉田絵美さん(うだつマルシェ/徳島
佐藤雄一 (ニイガタブックライト/新潟)


ランチタイムの食堂で軽い打ち合わせをする。木村敦子さんが開口一番、生ビールを
オーダーしたのがカッコよかった。食事を済ませて会場に戻ってみたら、往来堂書店
笈入店長が事務方に徹しておられた。不忍の歴史とスケールの大きさを感じずにはいられない。

一昨日の嶋さんトークにも来てくれた「HAB」の編集・発行人、松井さんは連続参加。HABは、
 “人と本屋”の略Human And Bookstore)。創刊号は新潟特集で、ありがたいことに、この会場
でもよく売れた。

「ブックイベント」と、ひとくちにいってもアプローチの仕方は様々で、皆の話が興味深い。
新潟代表北書店は、「日々の商いとして、本が売れなければどうにもならない」という、
いつものスタンスで話す。「君はどこに出しても座持ちがいいので重宝だ」と、打ち上げの
居酒屋お座敷で、ナンダロウおじさんにお褒めの(?)言葉をいただく。この席から、
“物書き”木村衣有子さんも合流。この人に会うといつも毒舌大会になる(超楽しい)。


明るいうちから酒を飲むことに馴れていないがここは谷根千。散会後、宿へと向かう
道すがら、先頃発売になったばかりの、人とお店と街の物語が立ち昇るガイド本、
谷根千ちいさなお店散歩」(WAVE出版)の著者、南陀楼綾繁その人の解説を聞きながら
「ご当地」をブラブラ。なんという贅沢。「荷物重いだろうから荷台に乗せなよ」と、マイカーを
引いてきた優しいナンダロウさん。おしゃれとか一切関係ない普通の黒い自転車に、
「そうこなくっちゃ」とひとりで納得。いつもはゲストとして新潟に招いている人の日常が、
時折垣間見えるのもディープな楽しみだ。

このほろ酔い散歩がとにかくよかった。へび道~よみせ通り~谷中ぎんざ~夕やけだんだん。
“夕やけだんだん” 最高。だんだんを登ると現れる、古書信天翁(あほうどり)の佇まい。
誰もが羨むロケーションだ。思わず「家賃は?」なんて無粋な質問をしてしまい反省。
「谷根千ちいさなお店散歩 発売記念写真展」も開催されていた。旅に出る動機として、
いつか夕暮れ時にこの店に再訪する、というのはありだな、と思う。

よみせ通りまで戻り、翌日のイベント会場を確認。そのお隣にある、ビアパブイシイ
かるく2次会。満員で外にもベンチがある。ひとり旅なら完全スルーだが、ナンダロウさんと
一緒なのでリラックスして飲む。開店1周年前夜のようで、店全体がとてもいい雰囲気。
明日に備えて早めに解散。過去にもあったのだが、「ナンダロウ邸が見たい!」という
こちらの要望は却下された。こう頑なに毎回拒否られると、逆になんとしても突撃したく
なるが、おとなしく宿に戻り爆睡。朝まで。


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2日目は「出張北書店」。古書ほうろうさんに事前に送っておいたダンボール4箱を取りに
行く。ボランティアスタッフが数名ずつ、各所に配置されているようで、運搬や設営など
ご協力いただきとても助かった。本日の会場は「戸野廣浩司記念劇場(トノゲキ)」。
一箱の出店者さんも一緒なので本はまあまあそこそこ。LIFE-mag.HABこういう
場では威力を発揮する「石橋毅史 本屋な日々北書店特集(2部セット300円)など、
新潟以外では買いにくいものを中心に。あ、もちろん「ケトル」も。
その他は出張イベントの定番「菌屋」グッズや、「ツバメコーヒー」各種、ご近所カフェ
マリールゥ」のパンケーキ等々・・食品強し、だ。


イベントMAPを見ると、根津から谷中、千駄木まで、あちこちに一箱の出店があり、
新潟とは(おそらく他所の地域とも)随分違う趣向で行なわれている。街の回遊性が
存分に活かされた、谷根千エリアだからこそ実現可能な方法かもしれない。これだけ
広範囲に散っているんだから、わりと緩やかな出足かも、という見立ては大きく外れ、
開始と同時にたくさんのお客さんが来てくれた。知り合いの版元営業さんや編者者さんも
多く、会話が楽しい。

出店の依頼とともに、仰せつかっていたもうひとつ。今日の一箱のなかから「北書店賞」を
選ぶのだ。お昼過ぎ、少し落ち着いてきたタイミングを見計らって、ボランティアスタッフさんに
店番を託し、トノゲキをでる。しかしすでに自分のなかで北書店賞はほぼ決定していた。
同じ会場で出店されていた『嫌記箱』さん。箱を見るなり数冊買っちゃった、というだけの
理由だが、ファーストインパクトは大事だ。器としての箱のそっけなさも魅力的だった。

箱の主はなんと「出版業界最底辺日記 ─エロ漫画編集者「嫌われ者の記」(ちくま文庫)の著者、
塩山芳明さんだった(編集はナンダロウさん!)。ご本人には後ほど挨拶させていただいたが、
このときは代理の人が店番をされていた。かりだされた感満載の可笑しさが好印象だった
その彼は新潟のご出身で、これも嬉しい出会いだった。

目星はつけたがそれはそれ。やはりイベント全体の様子を楽しまなくては。ほうろうさんを
スタート地点に、旧安田邸、千駄木の郷、羽鳥書店等をまわる。羽鳥書店では写真展が
開催されていた。団子坂を下り、不忍通りに出ると、人ごみはさらに増す。往来堂から先へ
行くにはどう考えても時間が足りず泣く泣く断念。2年前に行ったきりの「タナカホンヤ」を
見たかった。往来堂を左に折れ、昨夜歩いた「へび道」の入り口あたり、「旅ベーグル」を
目指す。“MJ”こと、マツジュンさんに会いたかったのだ。売切御礼、カーテンがかかった店の
扉をかまわず開けると、MJはベーグルをひとつ残して待っていてくれた。時間を気にしつつ
少しだけ話す。名残惜しいが再会を約束し別れる。この時点で、トノゲキを出てからすでに
小1時間が経過しているので足早に戻る。お店や一箱を、ひとつひとつじっくり見ていると、
丸1日かけても時間が足りない感じだ。

そろそろトノゲキが見えてくるあたりで、向こうから石橋毅史さんが歩いてきた。こちらが
出かけたあと、入れ違いで北書店ブースを冷やかしに来てくれたのだ。一服できるスポットを
探しつつ近況報告。さすがに戻らねばと、石橋さんと歩いていたら「野宿屋郎」のKさんに遭遇。
みんなでブースに戻る。キャビネのMさんとも再会。東京・・楽しすぎだって。

留守を守ってくださったスタッフさんにお礼を言い、再び売り子になる。本も雑貨も、1日通して
良く売れた。本当にありがたいことだ。お買い上げいただいた皆様に感謝感謝。


まもなくイベント終了。撤収中、外へ出ると、私が東京での出張販売をするときにはいつも
手伝ってくれる、フリー編集者で “東京在住の北書店バイト” Aさんにバッタリ会う。
前日のシンポジウムでご一緒した、「うだつ~」の吉田さんとはお友達だそうで、
別会場の「出張うだつマルシェ」に顔を見に出かけた帰りとのこと。
「言ってくれれば手伝うのに、なんで連絡をよこさないのだ」とAさんに叱られる。


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片付けも終わり、表彰式までの1時間、石橋さんともう少し話そうと、手頃な喫茶店を探すも
これが意外と難しい。しばらく歩いて、ガッチリ隔離された喫煙室完備のお店を見つけ、ようやく
落ち着いて話し込む。

北書店もそうだが、全国各地で奮闘しておられる本屋の皆さんの影で、よくよく考えたら、この
石橋さんだって大変だ。「新文化」という組織を離れ、フリーになって本屋(或いは本屋的な人)を
取材しているというのも、新刊屋を経営していくことと同じくらい綱渡りだ。だけどもなんとか
踏ん張ろうよと、結局は日々の商いに話は流れる。ブックイベントに参加した2日間の終わりに、
いい時間を持てた。


戻ってみると、トノゲキはすっかり表彰式の会場仕様になっていた。指定の席に座り開始を
待つ。昨年の秋、Book! Book! AIZU」でご一緒した、「わめぞ」代表、向井透史さんも
いらっしゃる。ナンダロウさんとタナカホンヤさんの進行で表彰式が始まる。

プレゼンテーターがそれぞれに挨拶。不忍ブックストリートの10年をしきりに褒める向井さんと、
「今日の君変だよ。どうしたの?」と、こそばゆい感じになっているナンダロウさん。名場面だ。

北書店賞を渡すとき、やはり受け取るのは、かりだされてきた新潟出身のSさんだったのが
面白い。と同時に、何だか塩山さんに賞をあげるだなんて、かえって失礼ではないかと
思ってしまった。賞品は粗品ともうひとつある。後日発表できるかどうか・・とにかく、ひと目
見た時の印象は覆らず「嫌記箱」さんを選んだ。参加してみてどうだったかと聞かれたので、

「自分はとにかく出不精で、商売柄もあり、ほとんど旅に出かけることがなく、いざ出かけ
てもその土地になかなか馴染めず違和感を感じまくる性格なのだが、今日こうやって楽しく
過ごせたのは、街の魅力はもちろんだけど、要所要所に本があるからで、自分がそこに
いることを許されているような気がしたんじゃないかな」

という話をした。


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全日程が終了し、最終の上越新幹線の時刻から逆算して少しだけ打ち上げに顔を出す。
これだけの大所帯だと、入れるお店も限られるから段取りが大変だ。70人以上の貸切。
だけど知っている顔が少ないなあと思ったら、ここに集まったのはボランティアスタッフの
皆さんだった。出店者さんも含めての打ち上げは無理なので、別々に開催するそうだ。
それだけ大きな規模のイベントなのだと、あらためて思う。

ナンダロウさんの音頭で宴会が始まる。どこかは聞かなかったが、出版社の電子書籍
部門で働く台湾の女性と同席する。近所にお住まいとのこと。本屋の資金繰りの話に
身を乗り出すと、「また君はそういう話になるとイキイキするね」とナンダロウおじさん。
はいはい。毎日大変です。

たしかに毎日大変だけれど、この東京での2日間を振り返っただけでも、これだけ
たくさんの人たちと、楽しい時間を過ごしていることもまた事実だ。それは遡れば、
ナンダロウさんが3年半前に、北書店という「ちいさなお店」を訪ねてきた日にたどりつく。


新幹線の時刻が迫ってきたので、打ち上げ会場の焼き鳥屋を後にする。イベントが
無事終了した安堵感からか、前日よりもリラックスして飲んでいるナンダロウさんが
店の外まで出てきて見送ってくれた。

西日暮里駅まで歩きながら、県外からのお客様を受け入れたり、こちらが出かけて
いったりした、この何日かのことを考えた。どこでも買えて、どこでも同じ価格の本を
並べているだけの毎日からうまれた “ここだけのもの” というか。



長々書いておいて、締める言葉が浮かばないというのもどうかと思うが、もうひとり
ご登場いただくことにする。ニイガタブックライトや、他の出張イベントでも何度となく
お世話にっている石井ゆかりさんのメールだ。

2年前、それこそイベントでご一緒したあとに、「なんで新刊売ってるだけで、こんなご縁が
出来るんだろうね」的な内容のメールを、お礼とともに送ったら返ってきた長文。


「これ、俺だけが読むっていうのはもったいないので、いつかブログにのせていいですか?」
と返したら、

「いいですけど、“そういって結局書かない” に、100円賭けます 笑」

と返ってきたのであった。(石井さんすいません。今さらですけどそのときが来ました)


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本って、音譜というかひとつの音みたいなもので、
世界中の本を、一生でたった一冊だけしか読まない、
ということってないと思うんです。


本は、他の本とのむすびつきで初めてわかることってあって、
ひとつひとつが断絶しているわけではない。今、ネット書店は
それをぶつぶつ断絶して売っているけど、本を買って読むという
行為は、書店で音楽を聴き、自分の家で新たに自分だけの音楽を作る、
みたいなものではないかと思ってるんです。

だとすれば、書店はライブハウスみたいなもので、ならば

「そこでしか聴けない音」があるわけで、書店に行くために距離を超えていく、
という「旅」が成立するんじゃないかと思ってるんです、三蔵法師みたいに(笑
ひとつひとつの音は同じ「ドレミ」でも、その並べ方や音の出し方で別々の
音楽ができあがるわけですよね。



中略(ちょい過激)


本屋さんは、他のお店もそうですけれども
「その土地のひとだけが知っていればよい」というものではなくて、
「その土地を訪れる可能性のある人=全ての人に知ってもらう価値はある」
ということになってるじゃないかと思います。新潟旅行をする人は、

北書店に行くべきだと私は思ってるんです。旅行って、神社仏閣と
宿泊と食事だけじゃないだろ、と思うわけです。
そこには、そこでしか聴けない音楽のような「本棚」があるのです。


北書店には、あまりハッキリは見えないけれども、細い物語の糸みたいな
ものがあって、それが距離を超えていろんな場所につながっていて、
これってとても「あるべき姿」だと思うのです。


そういう物語の糸があれば、人はその物語をたぐって、
知らない場所を「知っている場所」に変えることができるんだと思います。





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あっという間に5月ですね。

来月はニイガタブックライトvol 7・一箱古本市in現代市(学校町通)が開催されます。
っていうか開催します。詳細はまた後日。

ここまで気長に読んでくださった人は何人いるかな?なにか差し上げたい気分です。


ではではまた近日。
旅はまだまだ続きます。